作り手さんの想い

ふわっととろけるイギリス食パン。工房長は、生地と会話しながら焼き上げる。

12月28日、只今朝5:30。真っ暗で、真冬の冷たい空気にあたりながら、テクテクテクと山奥にあるパン屋さんへ。

ここは、豊田市足助町。香嵐渓と呼ばれる紅葉がきれいな観光地の近くに、バーバラハウスというパン屋さんがあります。

ここでは、熟練の工房長と元気なおば(あ)ちゃんたちが手作りのパンを提供しています。

数々のパンが並びますが、今回紹介するのは、イギリスパン。バーバラはうすの中でも先代から変わらぬ技法をそのままに、人気の絶えない食パンです。

ちなみに、長方形の形をしている食パンを「角食パン」。ぷくぷくっと、お山の形に盛り上がっているものを山型食パン(別名:イギリスパン)と呼びます。

初対面のときから、「ウチにこだわりがありますかねえ…?」なんて工房長が言うから、正直あまり期待していませんでした。

しかし、イギリスパンのぷっくらとした感じが愛らしく、とろけるような口溶けには思わず笑みが。

おいしいパンとコーヒーから始まる朝食は、一日を元気にスタートさせてくれます。

先に言っちゃいます。今回の取材を通してわかったこと。それは、工房長のやさしさがパンづくりにも溢れていることです。

「パンは生きものだからね。」そう言う工房長は、材料を混ぜるときから焼きあがるときまで、まるでパンと会話しているかのように、生地の調子を感じながらやさしく作りあげていくのです。

例え、同じ材料を使い、同じ工程でつくったとしても、生地との向き合い方、そして作る人の気持ちによって出来あがるものは変わると思いました。

工房長の繊細な気配りが、生地づくりに現れる。

生地づくりには、秘訣があります。中だね法といって、前の日に作っておいて1日寝かせたタネをもとに、粉やお水、そして少しの砂糖などを入れていきます。

中だね法にする方が、生地が安定するんだそうです。この方法自体は、他のパン屋さんでも多くやっているのですが、バーバラはうすが大切にしているのは、細かな生地の調整。

材料の配合ももちろんですが、混ぜるスピードや混ぜる時間、さらには室内の温度など、ほんの少しの違いによって生地の調子は大きく変わってきます。

高林工房長は、その日の気温(室温)によって、材料に混ぜる「水」自体の温度も調整するんだとか。

「食パンは、最初にミキサーで練った時、25度以下に生地が保たれているのがちょうどいい。それ以上冷たいと膨らまなかったり、暖かいと発酵はするもののバサバサな焼き上がりになったりしてしまう。それに、気泡が大きくなると、香りがない食パンになってしまうからね。」
と、生地の温度には細心の注意を払っていました。

余談ですが、パン作りには水が欠かせないため、水がきれいなことにも、香嵐渓にあるパン屋さんならではの魅力だそうです。

高林工房長も、もともと県外から移住されたようで、「初めてこの足助に来たとき、水の澄みかたには驚いたよ。移住前からパンを作っているが、やっぱり水によってパンの香りは全然違ってくる。」と話していました。


バーバラはうすのテラスからみた景色

材料を混ぜ合わせ、生地を練ります。そのとき、生地をすこし手に取って広げてみると…、最適な生地の状態かがわかるんだそうです。

手の甲に生地を乗せてみて、均等に膜が張っているかどうかが重要なポイント。最初に膜を張ってみたときはまだ生地が練り足りなかったようで、もう少し練るなどの調整をしていました。

こだわりんとしては、確かに言われてみれば…と言う程度しか膜の張り具合はわかりませんでしたが、職人には一眼でわかるようです。いや、もっと言えば、毎日生地と向き合っているから、手に生地を乗せなくても大体の調子は一目でわかるようです。

滑らかな食感は生地の締め方から。生地と会話しながら、発酵した生地を締めていく。

バーバラはうすのイギリスパンをじっくりみてみると、渦のような巻き方をしています。食パンを手で割いてみても、円を描くようにパンができていることがわかります。

これは、何度も生地を寝かしては締めてを繰り返している証。生地の締め方によって、パンの仕上がりが変わってくるのです。

30分寝かしたあと、コロコロと手で丸めるように生地を締めていきます。酵母は生きているから、発酵によってどんどんガスが出て生地が膨らんできてしまう。そのため、定期的に生地を締めることでガスを抜き、発酵の仕方にムラがないようにするそうです。

「やってみる?」と聞かれ、教えてもらいながら、こだわりんも試してみました。

「上手だね。」と優しい工房長に言われ、案外自分もセンスあるんじゃないかと調子に乗って生地を締めていると、その横で両手をクルクル動かしている工房長。「一応同じことやってるんだけどねえ(笑)」なんてフォローしてくれたけど、とても同じ動きには思えません。私が1つやる間に、工房長は6つ仕上げていました。

締めて丸くなった生地さんたち。なぜだか喜んでいるように、こだわりんには見えました。「パンは生きている。」と工房長は言いますが、放っておくと生地が膨らんだり、締め方によってぷっくら感が変わったりと、とても繊細。
だから、工房長は、生きものを扱うように、優しく丁寧に生地と会話をしながら接しているのです。

やってみて分かったのですが、パンづくりは、まさに人の手のつよさ、温度などによって、本当に違いが現れてくるのだと思いました。

発酵を待っている間、「朝ごはん食べてないでしょ?」と、私とカメラマンに、ホットコーヒーと朝イチで焼いたパンをそっと出してくれる。そんな優しい気遣いをしてくれる工房長。

まさに、そういった気配りが、生地との向き合い方にも表れているように感じました。早朝5時半から始まるパンの仕込み。手際良さのなかには、パンの気持ちを汲み取るような丁寧な微調整があり、パンとの会話がありました。

活きいきとしたぷっくら感に、とろけるような口溶けのイギリスパン。まるで、パンそのものが作ってくれてありがとうと喜んでいるような気がしました。

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